●JPOPサウンドの核心部分が、実は1つのコード進行で出来ていた、という話
◆J-POPのコード理論は本当に形骸化しているのか?
コード進行のお話と後半はJ-POPのコード進行の形骸化を危惧する記事です。こういうお話は理論がわからなくても「今まで何だかわからないけれど流行の曲が嫌い」という人の「嫌いの為のツール」に簡単になってしまうのでまた話が難しいです。というか私が一番この動画を理解していないのかもしれません...
私の場合90年代よりも00年代の方が圧倒的に大量に音楽を消費しており、beatmaniaという作品に触れる前までは音楽そのものに触れることがなかった人ですので、人々の生活から音楽が離れつつあるのかどうかという点に実感が少ない人間です。これ自体があまり多数派とは言い難いものでしょう。まずこれが一点。
そして何よりも以上のような経験からJ-POPリアルタイムではないため、殆どの人にとって10年前とは一番ダサイ時期であるという「最近の若い奴は...」という視点と、シブヤ系・パラパラを初めとするファッション一体型の音楽という視点を差し引いた状態で、「本当にJ-POPのコード進行が形骸化しているのかどうか」と検討出来るような楽曲知識がありません。本当にJ-POPのコード進行は形骸化しているのでしょうか?わかりません、私はあまりにもJ-POP体験が乏しすぎます。しかしこんなことを言っていてはいつまで経ってもJ-POPをまともに俯瞰することが出来ないような気がします...ここではリンク先の記事のように本当にJ-POPのコード進行が形骸化しているのだという結論を前提に考えてみます。
J-POPのコード進行が形骸化しているのだとするとその原因はどこにあるのでしょう。もしそうならば、それは一重に作家の力量の問題なのでしょうか。本題を仮定のまま進めますが、私はそれよりも90年代にミリオンバブルを迎えた音楽業界の「筋肉質」な体形の方が問題になっているのではないかと思います。
◆レコードレーベルの新陳代謝
●「筋肉質」になった企業が大量の非正社員からクビを切る地獄絵が始まる
「企業が筋肉質になる」という表現は上記のリンク先をご参照願います。またしても私には雇用問題について検討出来る知識がありませんので置いておきますが、この記事は簡単に言うと企業の利益が上がっている時に従業員の給料を下げた(=「筋肉質」になった)結果、市場に何らかのトラブルが起こった際に「筋肉質」であるが故に簡単に故障してしまうというお話です、多分。90年代はテレビ・タイアップと一体化した音楽業界が不況の世に空前のミリオンバブルを迎えた正に「J-POPの10年」だったそうです。例えば私が世界で一番好きなレコード会社であるavex trax――余談ですが、私は音楽というモノをavex traxから学んだ人間だと思います。そのぐらい好き――は元は業界にクラブミュージックを導入した先駆的なベンチャー企業(ベンチャーは言い過ぎ?)でした。
そんなavex traxが小室ブームや浜崎フィーバーで巨体化し筋肉質になり、不正コピーとネット時代という「市場のトラブル」を迎えた時に真っ先にCCCD(コピーコントロールCD)を導入し大失敗を経験しました。あまりにも巨体に、あまりにも筋肉質に成りすぎたが故に、産まれたばかりの時ならパン一つで食えていたモノが、常にステーキを食べていなければならない程の新陳代謝にステージアップしたのかもしれません。こうなった状態で市場のトラブルを迎え目前の利益を失うと大変苦しい思いをすることになります。急激に成長したこととCCCDという分かり易い対応があったため例としてavex traxを挙げましたが、結果、あらゆるメジャーレーベルが周知の通り悪戦苦闘の現在を送っています。
◆確実に売れるモノしか出版したくない
明らかにこれまでとは売れるための方法が変わっているのにも関わらずあまりにも巨体で筋肉質であるためなかなか小回りが効きません。結果、多くのメジャーレーベルが「確実に売れると分かっているモノ以外はリリースしない」状態になっています。これのもっと分かり易い極限状態の業界として一足先に不況の煽りを食らった出版業界が思い当たります。今、出版業界は「紙媒体」としての苦戦を強いられ、極端な程「確実に売れると分かっているモノ以外は出版しない」状態になっているそうです。でかければでかい程、とにかく企画書が通らないそうです。だから名前で確実に売れることがわかっているお笑いタレントの企画本がもの凄く増えました。J-POPシーンも限りになくこれに近い状態に進んでいるようです。
◆カバーソングという「限りある資源」
音楽における限りなく「確実に売れるモノ」とは何なのでしょう。確実に言える一つはカバーソングではないでしょうか。2007年DE DE MOUSEの大成功を例に「通」の最先端を常に揃えるヴィレッジバンガード――私は極端な話、同じ音楽でも「TSUTAYA」に置いてあればJ-POPで「とらのあな」に置いてあれば同人音楽で「ヴィレッジバンガード」に置いてあればサブカル音楽であると思っていますが――で最近大変なショックを受けました。置いてあるCDの殆どがカバーソングなのです。店舗面積に対して音楽コーナーが少ない(本来は雑貨屋である)ヴィレッジバンガードがHMVやタワレコ等の大型店に比べて、この傾向が大変ダイナミックに現れていてわかりやすいので例にあげました。とにかくメジャーレーベルが「確実に売れるモノ」を探した結果カバーソングの乱発に辿りついているのだと思います。ですがそんなカバーソングも軒並み乱発した結果もう息切れの傾向を見せ始めています。売れないなら売れないなりに企業としての規模を縮小させなければいけないのですが、巨体で筋肉質であるが故にそういう訳にはいかないのですね。しかしながらカバーソングにはネタ元という限りある資源があり限界が見えます――ネタ元の限りある資源というのはニコニコ動画も共通ですが、ニコニコ動画の職人は巨体ではないが故に失敗することに恐怖心がない。
◆王道コードは「限りない資源」?
音楽における限りなく「確実に売れるモノ」とは何なのでしょう。もう一つ考えますとそれこそが「形骸化した」とされる王道コード進行なのではないでしょうか。通常、音楽業界にはメロディには著作権がありますが、コード進行には著作権がありません。この場合、理論上は限りない資源と言えるのではないでしょうか。話がズレますが、最近活気を見せる同人音楽の世界では、サークルの構成メンバーが1~3人とかであったりするため、非常に身軽であるため――だから虚弱体質でもある――、ある程度知名度のあるサークルがリリースするアルバムの中で「*割ぐらいはキャッチーで分かり易い曲、残りの曲は自分がやりたい好きな音楽」という方向でリリースされた作品が多数見受けられます。身軽な作家は、「確実に受けるかどうかわからない」作品をこのような形で即座にリリースすることが出来るのですが、巨体で筋肉質であるメジャーレーベルは全てのシングルリリースでコケる訳にはいかず――なんといっても一人の作家が作る楽曲の後ろには私達には信じがたい程沢山の社員の生活が掛かっている、それは「アナタ」だけの楽曲ではないのです――実験的な事が非常にしにくいのだと思います。次のシングルを確実にヒットさせるにはどうしたらいいのか、そこでやっぱり王道コード進行。コード進行という話とはズレますが、本来ならジャンル的に言ってメチャクチャに実験的なアプローチが出来るはずのChiptune/Breakcore畑のYMCK/DE DE MOUSEもメジャーレーベルに移ってからのアプローチは凄く苦労していそうです。メジャーレーベルに移ったからには、全ての作品がヒットしないといけないのですね...
◆アニメソングも筋肉質になるのか?
最近アニメソングのポップチャートへの台頭が話題になっています。アニメソングをリリースするレーベルはまだJ-POPメジャーよりも比較的身軽であることも大事ですが、何よりも主題歌やキャラクターソングといった「確実に売れるモノ」である企画物をヒジョーにリリースし易いというのが強みなのだと思います。だから、アニメソングという楽曲の目新しさ、ジャンルとしての斬新さも大事ですが、ニーズを考えずに新陳代謝だけをステージアップさせてJ-POPメジャーと同じ轍を踏んでは大変なことになってしまうかもしれません。更に嫌みに近い言い方になってしまいますが――確認し直しますが、そんなつもりは毛頭ありません――実際問題、J-POPの王道コード進行並に「アニメ声」の声優が重宝されることや、「普段音楽と接することが無い」リスナーというのが、この業界では非常に重要な要素になっているのではないかと思います。
こんなことを言うととてもネガティブな意味に取れる文章になりますが、そういうつもりはありません。業界が違えば相手が違うのは当然です。そしてだからこそこの業界では、「コード進行のバリエーション」よりも「元ネタのアニメのバリエーション」が優先されるかもしれないとか、今までの業界構造には無かった可能性を広げてくれるのだと思います。
ということで、私はコード理論の形骸化というよりももしかしたらこれは出版経営の方の問題なのではないかな、と思いました。ちなみに同人音楽に関する「確実に売れるモノ」の考察は自分語り108 日活ロマンポルノと美少女ゲームと東方アレンジを参照願います。
「エアーマンが倒せない」やら「みっくみく」やら「鳥の詩」やら「god knows ... 」やら、もう本当に数多くの楽曲が王道進行を使用しており、それゆえに「適当にかき集めた曲が、メドレーや二重奏で見事に綺麗に繋がる」ところが大変興味深いですね。先の音極道さんの動画がうpされた時点では「JPOP涙目wwww」「さすがJPOPは糞www」みたいな反応があったのですが、自分たちが支持していた曲もまさにど真ん中だったのがまあ面白いといえば面白かったかなw
◆結局何が原因なのか?
こちら、コード理論がさっぱりわからない私にとってとても分かり易い記事だったので引用させて頂きます。私が冒頭に書いた「嫌いの為のツールとして安易に使いたくない」というのはこれなんです。※この動画は「あの有名な曲も実は王道コード進行だ」というのではなく「あの有名な曲に王道コード進行を載せてもこうなる」という動画です。
私は以前、大好きな「みくみくにしてあげる♪」を耳コピした際にそのあまりのシンプルな構成に大変に驚いた記憶があります。何故あそこまでシンプルな構成で私達を感動させられるのか。あの楽曲はたった三音のベース音を一小節ループするだけで音が合わせられる程のシンプルな構成で出来上がっています。しかも楽曲制作を行うモノなら誰もが顔をしかめるであろうチープなミックスダウン。しかしあの楽曲から受け取る私の感動は本物です。わからない、私は音楽というものが全くわかりません。コード理論をさっぱり理解していない私にも音楽という不思議さをもう一度認識させられる瞬間でした。
以上、日頃からちょっと疑問に思っていたことなので大変に面白い記事が見つかったので、よくわからないままよくわからないなりに書き綴ってみました。当方J-POPに疎いため持論を即座に撤回する用意有り


