[REVIEW]他人語り24 本田透 / なぜケータイ小説は売れるのか
【本】
話題のケータイ小説の仕組みを読み解く!
続々とヒット作が生み出されるケータイ小説の内容や仕組みを鮮やかに読み解く。
ケータイ小説の特徴、読者層の傾向、映画やマンガへの展開など、ケータイ小説の全貌に挑む!
これは面白い!ケータイ小説に関するあらゆる疑問が溶けてゆきました。
命題であるケータイ小説が売れる理由の考察は、まぁ落とし所としてはそんな感じかな、ぐらいの納得でいいと思うのでとりあえずそこは置いておきます。逆に言うとそれ以外の部分に関しては何の反論もない程に飲まれました。面白い!
前期ケータイ小説ブームと後期ケータイ小説ブームの決定的違い、特に全ての発端であるDeep Loveの著者Yoshiの徹底的なマーケティング戦略には驚くばかり、同人小説家がよくもまぁこれだけの確固たる意志を持ってメジャーレーベルからのオファーを断れるものだ。そして作家側のマーケティングを全て捨てた後記ブーム。「出すまで売れるかわからない」という書籍の常識を「ページビューから推測可能」という非常識がぶち壊してしまう話も非常に面白いですね。つまり、作家側が捨てたマーケティングを、システム上でレーベル側が拾い上げた。
そして、ケータイ小説が何故レイプやエイズなど特別極端な話に、しかもそれがまるでテンプレートのように揃ったプロットでリリースされていくのか、という話はかなり納得のゆく考察がなされていました。
ケータイ小説の中身はそこまでとして、後半はケータイ小説の立ち位置とバッシングへの考察です。何故一般の人々がケータイ小説を無視できなくなってしまったのかという話は、ピュアオーディオの例を元に説明してくれ私の疑問を非常にすっきりとさせてくれています、これはわかりやすい!
そして文学ヒエラルキーはそのままずばり私がやっている音楽ヒエラルキーに繋がる部分であり、二つの対抗する新旧ムーブメントが制度によって腐敗していくまでの仕組みをわかりやすく解説してくれ、私のやっている音楽活動の間違いの一つに気付くことができました。
もはやここまで来ると、文学 vs ケータイ小説という枠で納まる話ではなく、誰もが発信者足りうる今ならどのような分野であっても巻き起こるであろう、ありとあらゆる文化衝突を包括して考察してくれているような気がします。
中でもPCネットとケータイネットの断絶、都市文化と地方文化の断絶は非常に興味深く、都市が都市ばかり見て、地方が都市に飽きた瞬間に起こる歪みは既に色々な場所で起きているではないかと思います。
そして最後にニヒリズムの話。ケータイ小説だけではない、世間一般の所謂DQN,ヲタ,スイーツ,パンピー等の価値観の断絶を考えるうえでずっと疑問だった部分が大分理解出来た気がします。
なんだか今回の感想は語尾を一々変えているだけで、つまりは一言「著者の言うとおりだ」と何度も言い直すだけになってしまいましたね。そのぐらいに本書へ新しい考察を加える余地を見いだせない程マル飲みしてしまいました。この妄信はきっとどこかに穴があるはずですが、とりあえず飲まれてしまいました。なんて面白い本だ。
『ライトノベル読者は創作=小説との区別がついているが、周囲からは「現実と非現実の区別がついていない」という視線で見られることがある。ケータイ小説読者は小説と現実の区別がついていないが、周囲からは「あんな現実があるわけがないのに、なぜリアルだと言えるのだろう」と不思議がられる。』
★★★★★
