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    [5768]5768 - 2 = 機械が作る音楽


    【12月11日】

    「私思うんだけどさ。音楽って、実は機械が作ってるんじゃないのかな?」

    「はい?えっと、ごめんもう一回お願い。」

    「いやだからね。私達は人間が音楽を作っているとか信じ込んでるけど。実際のところ、音楽を作ってるのは機械なんじゃないかと思うわけ。」

    「…うん。わかった。とりあえずメシだ。」

    「そうだね、御飯だね。」


    一三(カズミ)がまたよくわからないことを言いだした。何て言った?機械が音楽を作ってる?なんだ如何にもこいつが言いそうなことじゃないか。確かに音楽とはテクノロジーだ。それは演奏技術の面でもそうだし、録音技術やら再生技術においてもテクノロジーだと言える。エジソンがレコード(エジソンの提唱した円筒レコード自体は普及はしなかったけど)という技術を作りだしたその時まで、音楽とは演奏家が演奏したものを目の前で聞くことこそが音楽だった。だから他人が演奏するために楽譜を売ることこそが”音楽を売る”ということだったわけだし、そういう意味では音楽=演奏とは言わなくても音楽=楽譜だったかもしれないけど、どっちにしたって結局はその楽譜か何かを元に演奏したものを、俺達は目の前で聞かなくてはいけなかった。それが音楽だった。今俺達がこうして海の向こうの、いや、隣町のバンドマンの歌でもいいかな、を聴くことが出来るのは全てテクノロジーのおかげだ。

    じゃあ音楽がテクノロジーではなかった時代、音楽とは演奏であった時代の音楽の立ち位置はなんなんだろう?クラシック音楽の時代はオーケストラがいて、それを貴族階級だかなんだかがみんなして聴いてる風景が思い起こされる。じゃあ昔は音楽とは金持ちのための芸術もしくは道楽だったんだろうか。いやいや、映画アマデウスでは居酒屋みたいなところで演奏してまわる小遣い稼ぎの演奏家と、それに合わせてべろんべろんによっぱらってピアノを弾き続けるモーツァルト(アマデウアスは確かモーツァルトの映画だったよな?)が映っていたじゃないか。モーツァルトが金持ちかどうかは置いておいて、すくなくともそうやって庶民が演奏を楽しむ場所はあったのだ。でもそうなると、音楽は金持ちのためだけの楽しみではなかったとしても、今みたいに一人で楽しめるものではなくて、ある程度人数のいるところへ行かないと聞けないものだったのだんだろうか。

    いやいや、なんか違うぞ、もっともっと昔に遡ってみよう。音楽とはなんだったんだ?音楽とは讃美歌だった時代があったはずだ。うぅーん、街の住人達の生き甲斐の一つというところまでは降りてこれそうだけれど、これだって一人じゃ出来ないし、まだまだクラシック時代の立ち位置に近いな。もっともっとも遡ってみよう。

    そもそも人間は何故音楽を楽しめるように出来てるんだ?違うな、人間が楽しめるように音楽を作っているんだ。じゃあその人間が音楽を楽しむというその原理自体はどこから来るのだろう。それはもしかして労働歌なんじゃないだろうか?田植えをより効率的に進めるべく、田植えの歌でタイミングを合せる農村の一家。船をより早くより真っ直ぐ進めるべく、舟歌でタイミングを合わせオールを漕ぐ海賊船の船員達。ぉお、これはいいな。人間の労働効率に直結するし、歌を楽しめるということが生きることそれ自体にプラスになる。しかも作業のタイミングを覚えるのに歌はうってつけな訳だし、これは一人での作業の場合でも当てはめられる。これなら音楽を楽しむということが、より良く生きるための人間の本能として正しい機能と言えるじゃないか。だから人間は音楽を楽しめるんだ。

    じゃあカズミが言っている”機械が音楽を作っている”というセリフは、本来人間が労働効率上昇へと使うべき本能を無視して、つまり作業効率だの人と人とのつながりだのを無視した録音テクノロジーによって、快楽のためのみに音楽が使われているというこの時代を嘆いてのセリフなわけだ。なるほどなるほど、中々深いをセリフを言うじゃないか。な、そうなんだろ?カズミ?

    「全然違う」

    あぁそうなの、全然違うの。ハッ、意味わかんねーし。どうせこれだってまたいつもの如くクラスメイトに声高に提唱してみたはいいものの、みんなして変人扱いしてくるからムカツイて、そんで学食で見かけた俺に愚痴ってるだけなんだろ?折角、俺が人間の生物学的本能にまで遡って少しでも理解してやろうってところに”全然違う”ですか、そうですか。

    「何その”人間の本能”って?そういうんじゃなくて私は制作環境のこと言ってるんだけど。」

    「それって、テクノミュージックがどうのとかそういう話?」

    「そういうの全部含めての話、五(イサム)は全然実感ない?」

    ますますわからない。

    「例えばね?私この前まで(SONY) ACID使ってたんだけどさ。最近(Ableton) liveに乗り換えたんだ。そしたら何て言うか、湧き出てくるアイデアがちょっとだけ違うわけ。で、そこで私気づいちゃったんだけど、これってもしかして曲のアイデアって、私達人間の内側から出てきてるんじゃなくて、機械の方から出てきてるんじゃないかな?」

    「それは、ギターを触ってたら良いフレーズが思いついちゃったとかそういうのと同じ話じゃないのか?結局人間が思いついてるんだろう?」

    「んーんー、そういう次元じゃなくて。例えばさ、この前課題で提出した曲聴いてもらったじゃん?」

    「あぁ、マイクロサンプリングのあれね。あんなの提出されても教授も困るだろうに…」

    「いいのよ出来不出来の話は。でね、私あの曲はさ、何ッにも考えないでACIDの前に座って、何ッにも考えないでサンプリングバンバン放り込んでたわけ。そしたらなんか、機械が勝手に曲作り始めたの。私が一人で椅子に座ってても絶対に思いつかないような音が、全然予期しない形で出来ちゃったわけ。それが面白くてたまらなくなっちゃって。でもこの前(Steinberg) CUBASEで同じようなことしようとしたら、全然出来なかったんだ。何て言うか、機械が教えてくれないっていうか…」

    「そりゃあ、あれだけシステムが違えば出来る曲も変わってくるだろ。」

    「そこ!DAWが違うと出来る曲が変わるの!それってつまり、機械が音楽を作ってるってことじゃん!?」

     あぁ、そういうことか。

     カズミの主張はこうだ。音楽の世界において楽器そのものが発する力によるインスパイアはよく聞く話だけど、こと俺達の専攻であるエレクトロニックミュージックの世界においては、もはや楽曲に対する制作アイデアは人間:機械=10:90ぐらいまで来てるんじゃないだろうか?特にカズミが作ったある曲では、どのサンプリングを選ぶかも、どの位置におくかも、どの音程にして配置するかもマウスの動きが生み出した偶然に任せた結果、全く予期せぬ(教授にとってはともかく、少なくともカズミにとっては)良い曲に仕上がったそうで、これはどう考えても機械が音楽を作っているのであり。その事実はたまたま人間:機械=1:99近くまで進んでしまった曲からカズミは気づくことが出来たけど、実は世の中のエレクトロニックミュージックのほとんどは人間:機械=50:50の域を超えていて、殆どの部分を機械が”アイデア出し”をすることで成り立っているんじゃないのか?と言いたかったらしい。

     確かに言いたいことはわからないでもない。DAWは現在どの製品でも進化が進み、サンプリング主体だったDAWであってもMIDI機能が充実し、同様にMIDI主体だったDAWも今ではサンプリング機能が充実している。その結果、本来ならちょっと回り道になるかもしれないけど最終的に鳴らせる音は同じはずなんだ。

    でも実際やってみるとその余りの違いに俺達は何度も驚かされる。サンプリングを放り込んだ時にACID, liveのように自動的にタイムストレッチしてくれるかどうかで、確実に実際に楽曲に載るサンプリングは変わる。サンプリングを放り込むだけで長さが揃うなら、何十回も載せるものを変えて、きちんと音の鳴りを確かめる気になるけど、タイムストレッチを自分でしなければならないのなら、大体3回も音を変えたらそのうちのどれかにしてしまうもんだ。何故って、それはもちろん面倒くさいからだ。

    ほんのちょっとの苦労、タイムストレッチなんてほんのちょっとの苦労だ。そのほんのちょっとの苦労をめんどくさがるために、実際に放り込むサンプリングは確実に変わるんだ。つまり曲が変わる。これをカズミは”機械が音楽を作る”と言っているらしい。うぅーん、嫌な言い方をするなぁこいつ。

    もしかしたらDAWとは利便性の戦いなのかもしれない。全部の利便性を最高にまで上げることは出来ない。例えばさっきのサンプリングの話が、MIDIなら今度は逆の方向で起こる。この道十年のCUBASEユーザーがACIDのMIDI画面を見たら絶句するかもしれないし、逆にACIDユーザーがCUBASEユーザーのサンプリング画面を見たら絶句するかもしれない。とにかく得意なことは違うんだ。でもそんなのほんのちょっとの違いなんだ…でもそれは確実に楽曲に影響を与える。シンセエディットだって、LFOのつまみがボタン一つで出てくるか、ボタン二つで出てくるのか、それとも最初っから出ているか、たったこれだけの違いで確実にそこを触る回数は変わるし、それはつまり曲が変わるのだ。パンニング機能のついていないフリーのDAWがあったとして、それを誰かに”元のサンプリングをあらかじめパンしておけば同じ効果になるんだからいいじゃないか”と言われたところで誰がそんな面倒なことをするだろうか。そんなDAWで作った曲は確実にステレオ感の無い楽曲になるんだろう、つまりカズミから言わせれば、その曲はそのDAWが作っているんだ。

    実際俺だってどんなに沢山の”ソフトシンセにたまたまついていたエフェクト”を使ってるだろう?確かに機械じゃなくて本当に俺が100%アイデアを作っているっていうなら、どんなにお手軽な付属エフェクトがあったって、世界中のどこかから自分の望むエフェクトを探し当て、それをバッチリ使うはずだ。でも今のソフトシンセはとっても便利だから、大概はそこについているエフェクトを使ってしまう。とはいっても別に人間様が考えた方がいい音になるとは限らない。自分で探し当てたエフェクトの方が良い音が出来るかも知れない、でも付属エフェクトの方がそのソフトシンセに合った音が出るかもしれない。それによって音が改善される時、それは”機械が曲を作っている”ことにはなるんだろうか?

    なんか、そんなのどうでもいいな…だって俺達が使ってるリミッターエフェクトは、もともとはラジオの音量を一定にするために作ったのに、それを誰かが”曲に使える”って言いだして使っちゃったわけだし。ディスト―ションエフェクトだって、ただ単に機械が耐えられないぐらいの音量のギターを突っ込んだらそんな風になったのを、誰かが”曲に使える”って言いだして使っちゃったわけだし。ACID HOUSEだってあの時もし”acid trax”を作った奴らの持っていたTB-303が偶然壊れてなかったら、そのジャンル自体が存在したかもどうかも怪しいんだ。でもその壊れたTB-303を使おうと考えた人間が確実にいたんだ。そんな偶然を”機械の意思”と取るか”人間の意思”と取るかは俺にはわからないし。そんなの四捨五入したくたって多分数字では表せられない。

    そういえば一二三(ウタカネ)さんも”うちの曲は全部、偶然出来ちゃっただけ”とか言ってたなぁ。全部、偶然。偶然誰かが見つけた技術で偶然作ってる。そんなこといったら科学技術全てがそうじゃないか、なんていうかウタカネさんあたりまで行くともう言うことが宗教入ってて気持ち悪い…

    ごり~ん♪

    「あ、授業だ。じゃーね。」

     そういってカズミは返事も待たずに駆けて行った。俺を悩むだけ悩ましといて、あっちからは一つの考察も無し。やっぱり愚痴だったんだ。そして俺のカレーは半分は残ったまま。

    俺も授業行くか…

    [5768]5768 - 1 = 口ダケ創作家

    【12月8日】

    「小説を書きたいと思うんだ。」

    「ん…今何つったの?」

    ゴリンゴリン

    目の前で少女らしからぬ豪快な音をたてながら、二 一三(いちぬき かずみ)がたくあんを咀嚼している。

    「や、小説が書きたいんだよ俺。」

    五五五 五(ごごもり いさみ)は改めて言った。

    「…」

    カズミの箸は止まらない、目だけがこちらを向いている。

    ゴリンゴリン




    「イサミ一応音楽家でしょ?なんか、一二三(うたかね)さんもそんなこと言ってなかったっけ?」

    「それウタカネさんじゃなくて十時(じゅうじ)さんだよ。ウタカネさんは絵が描きたいって言ってたな。」

    「ふぅ~ん…みんなして随分と余裕のゴザイマスことで、っていうか逆だと思ってた。ジュウジさんの方が絵とか描いてそうじゃない?なんか根暗そうだし。」

    「おまえさぁ、俺にもそうだけどさぁ、こんだけ年離れてんだからそういう言い方やめたら…?」

    「大丈夫だよ。本人の前では言ってないもん、イサミは我慢すればいいわけで。」

    「いや、もういいやそっちの話は。で、とにかく俺は小説が書きたいんだよ。」

    「知らないよそんなの、書きゃいいじゃん。書いてから持ってきなよ。それとも"俺が小説を書くことについてあなたはどのような意見をお持ちですか"って?いるよねぇ~どこの世界にもそういう作る作るって言っていつまで経っても曲作らない奴。」

    「そんなんじゃないよ。」

    「最近イサミ小説のノウハウ本とか面白がってやたら読んでたでしょ?だから今の話聞いた瞬間、"あぁ~そういうこと~?(笑)"とか思っちゃったしね。私が作曲本ばっかり読んで実際は作曲しない奴大嫌いだって知ってんでしょ?あぁいうのはね、"音楽を作りたい人"が読むんであってね?"音楽を作ってる人"は読まないわけ、わかんでしょ?小説もそれと同じ。書くか書かないかはどうでもいいからさっさと一曲持ってきなよ。ん、あんたの場合は原稿だっけ?」

    こいつはいつもこんな感じだ。他人というものにまるで興味がない。確かにそういう奴はいる。俺だって"いい曲を作るにはどうしたらいいんですか?"なんて言われても困るし、まずなんでもいいから作ってこい、話はそれからだ、とも思う。だけど小説は違う。確かに俺は小説のノウハウ本をここのところ集中して読んでいた。しかしあれは作曲のノウハウ本と違って精神論が特別多く記述されてあって、何よりノウハウ本とはいえ小説家が本を書くのだ。文自体が面白くないはずがない。だから小説においてはノウハウ本は読み物として楽しんでいただけであって作曲本のそれとは違うはずなのだ。いや、同じなのか?原稿という未知の世界に対して知りもしないのに俺は言い訳してるだけなのか?どこかに音楽家と小説家を兼業してる奴がいたらここに来て教えてくれ。モブノリオか?モブノリオに聞けばいいのか俺は?いや辞めておこう、それこそそんな時間があるなら小説を書けという話だ。

     机の向かいに座るカズミを見る。

    ゴリンゴリン

     未だにたくあんと格闘中だ。しかしその目は確実に俺を蔑んでいる…くそ…少なくとも5年は俺よりも遅く生まれてる癖に年上に向かってなんて目をしやがるんだこいつ…しかしなんだ?いつの間に俺もカズミの言う口ダケ創作家になってしまったんだ?いやまだだ、まだ俺は違う。書こう、今すぐ書けば問題ない。現に曲だって作ったじゃないか。ジュウジさんは何やってるのかよくわからないけど、少なくともウタカネさんは毎日デッサンの練習をしているし、音楽しながら他の創作活動だってやろうと思えばできるのものなのだ。俺も出来る、出来るはずだ。書こう、書いてみよう。しかし何を書こう…何をテーマに…いや待てそもそもジャンルは、ん…?

    「アレ…?俺、何のジャンルの小説書くんだ…?」

    「死ねばいいのに…」

     カズミがやっと箸を止めた、俺の呼吸も止まった。あぁ困った。そうだ、俺は書くものすら決まっていない。GABBERが好きな奴が曲を作ると言い出したらそいつはGABBERを作るんだろう。じゃあ俺は小説の何が好きなんだ?それはつまり俺は自分が何が好きかもわかっていないということだ。

    「死ねばいいのに…」

     俺の表情をどのように読み取ったのか、カズミが重ねて言う。

    「ほらきた。結局同じじゃん。"俺は作曲家になるんだ"っていうあぁいうのと一緒じゃん。自分が何がしたいか何て一々考えるような奴が創作云々とか言わないでくんない?私本気でそういうの嫌いだから。」

     何も言い返せないのでとりあえずラーメンの残りでもすすって時間を稼いでみた。が、勿論そんな時間稼ぎで答えが出るはずもない。

     俺は何が好きなんだろう?書店ではどのコーナーに行っているかまず考えてみようか。まずマニアックな店には行っていない。なんていうかこう、近所の大型書店に行って、平積みされてる本をこうやって…あぁ参ったな…大丈夫か俺…

     どのコーナーに行くのかは置いておこう、じゃあ好きな作家だ、好きな作家を挙げよう。清涼院流水・舞城王太郎・佐藤友哉・西尾維新…あれ?全部講談社ノベルスじゃないかこれ?参ったな…いるよなこういう奴…"俺、ライトノベルとかそういうのはちょっと合わないんで(笑)"とかなんかちょっと見下し目線でライトノベルファンにちっさなちっさなプライドぶら下げて好きな作家にこういう名前並べる奴…参ったな、大体そんな状況だな俺。何が好きなのか余計分からなくなったじゃないか。

    「いや、待って、いや、とにかく書くわ、書くよ、大丈夫。書く。」

     カクカクと呪文のように唱えてるうちにカズミは今にも席を立ちそうな勢いに、そしてその目はもう虫でも見るかのような目だ。あぁ、なんていうかもう耐えられない。焦る。別に編集だの担当だの目の前にしてるわけじゃないんだから俺が焦る必要はないんだけど、あぁちくしょうなんて目で見やがる…もう耐えられない。あ、一個思いついた。

    「ノンフィクション書くよ。いや、フィクション:ノンフィクション=50:50がいいな。」

    「あんた学院と自宅往復してるだけじゃん。何?実は大恋愛でもしてるわけ?」

    「いや、特にそういうわけでもないけど。」

    「あぁーあぁーもう苦しい苦しい。どうぞ通学列車の辛さのよく伝わる楽し~い文章でも書いてて下さいな。」

     さすがにここまで言われると凹むなぁ。あ、もう一個思いついた。

    「じゃあ俺とおまえの会話を小説にしよう。お、いいね、ノンフィクションじゃないかこれ。」

    「死ねばいいのに…」

    「ぅわぁ…いや、カズミとの会話じゃなくてもいいんだけどさ。とにかく音楽に関する会話とかさ?ぉお、更にいいね。音楽の小説。ほら?好きなものとバッチリ繋がってない?イケるイケる。」

    「真面目に付き合った私が馬鹿だったわ。もう授業始まる時間でしょ?はい、じゃあこの話これでオシマイね。」

    「まぁ、楽しみにしてなよ。俺は書くって言ったら書くよ。テーマも決まったわけだし。」

    「うんうんわかった、せいぜい楽しみにお待ちしてますから。」

     なんかしょうがないやつめみたいな目になってるけど、さっきの虫を見るような目よりも幾分かマシだ。あとはとにかく書いてみて感想でも聞いてみれば明日以降は少しでもまともな会話にもなることだろう。

     次の授業は小方厚教授の「音率と音階の科学」だ。こういう数学的なのはあんま興味ないんだけどな俺…こういうのこそカズミが取ればいいのに。まぁとにかくこれ終わって帰ったら早速執筆作業だ。


    【12月9日】

    「うん。いや、実際やるとなるとめんどいわこれ。」

    「死ねばいいのに…」